引越しの思い出 その3 ノンちゃんにさよならを…後編 2
2011/04/21 Thu
「こんなこと、あんなこと、あったでしょ♪ってお歌があるでしょう?
いつかみんな思いでになるんですね。
どんなに楽しいことも、悲しいことも…。」
街路樹の葉っぱが、はっきり葉っぱの形になった。
枝が風に揺れると、葉っぱがたくさんつながって揺れる。
葉っぱも絆だ。
続きものの記事です。
あくまでも、自己満足の記録であるので、おこがましいですが、
わけがわからないので、わけがわかりたいと思ってくださった方は、
引越しの思い出 その1 脱走と言わないで!
引越しの思い出 その2 外出と言ってよね。
引越しの思い出 その3 ノンちゃんにさよならを…前編
引越しの思い出 その3 ノンちゃんにさよならを…後編1
真にお手数ですが、上記のリンクをどうぞ。
私の失敗から得た教訓が、愛しい猫ちゃんとの生活の参考にでもなれば幸い…。
黒猫ノンちゃんは、きびなごを咥えた状態のままで、一部始終を見上げていた。
赤ちゃんの頃からお家の中で穏やかに育ったノンちゃんには、私としろちゃんが繰り広げている格闘の意味がわからなかったらしい。
しろちゃんに噛み付かれて、右手がしろちゃんの手から離れてしまった。
左手は離さないままなので、しろちゃんは足だけでぶら下がったままの状態になってしまった。
口に私の血をつけたままで、グロテスクなサーカスのよう。
身をよじるので、足もねじれそうだ。
考えや決心があったわけではなく、私は手を離した。
足の1本折れることがあっても…と思ってはいたが、それは私にはできないことだった。
「なんだかママとしろパパさんが、毎日毎日相談してる。
お家がどこかに変わるらしいけど、僕も一緒に行くんだね。
そういえば、しろパパさんと僕は同じ町生まれだね。
しろパパさんも、やっぱりあの軒下で生まれたんですか?」
しろパパさんは屋根の下ですよ、野良猫ではないからね。
「えーっ、しろパパさんは野良猫さんではなかったって?
僕、がっかりだな」
脱走1ヶ月半前のしろちゃん。
庭越しにはす向かいなのだが、引越す前の我が家からは物置の死角に入ってみえないお宅に、しろちゃんは走り入りこんだ。
門から入りこんで、庭に回り、縁の下で私に持たれた足を毛づくろい。
反対側の庭に回って、落ち着いて腰を下ろした。
よくよく見れば、しろちゃんの左右のお腹も顔も耳も土汚れで真っ黒。
つい今朝まで、自分のベッドの中で一緒に眠っていた白い息子。
お風呂にこそ入らないが、小さな汚れがついても、その都度拭ってやっていた白い一人息子が、汚れで真っ黒。
汚れは拭えば落ちるが、その様子に私は落胆。
しろちゃんが私の腕の中から遠く去って、他人になったように思えた。
現に去っていたのだが…。
「どこに行くのか僕にはわからないけど、
ちゃんと説明はあるんでしょうね、ママ。
猫だって、聞けばわかるんですから!」
脱走1ヶ月半前のしろちゃん。
Mさんが、庭のフェンス越しに、ノンちゃんのキャリーを手渡してくれた。
キャリーのドアを開けて、きびなごを入れて道路で待つ。
もしかして、しろちゃんはこのはす向かいの家に馴染みがある?
もちろん、その付近の元野良猫なのだから、入ったことがあっても当然だが、あまりにも勝手知ったる動きに、私はあることを思った。
しろちゃんは、この家で生まれたのではないかと。
この家の軒下で、猫母さんから生まれたのかもしれないと。
その猫母さんは、この家の外飼いの猫かもしれないし、ただの野良猫かもしれないが、警戒する様子もなく軒下に入ったのには訳があると思った。
「しろちゃん、生まれたお家に帰ったの?
それならもう、ママのところには戻ってこないかもね。
ママはさっき、しろちゃんの足に痛いことをしちゃったもんね。」
悲観的な思いばかりが頭をよぎる。
「てくび~、手首から血が出てるから、それを洗ったほうがいいよ~。」
Mさんにフェンス越しに言われて、改めて自分の手首を見る。
穴が手首の上下に4つ、しっかりと猫の牙の位置であいていた。
大事な血管が切れたわけではないが、血が流れ出て滴っていた。
「僕だって男の子です。
やるときはやりますよ。
悪い人は噛んでひっかいてやります。」
あの~ママを噛んだわけですが…
脱走1ヶ月半前のしろちゃん。
一旦失敗した捕獲は、二度目はなかなか難しいことはわかっていた。
大好きなきびなごも、しろちゃんにはもう魅力的ではないのか。
冷静になって思い返すと、しろちゃんはママのことが怖かったのだと思う。
いつもしないようなことをした…血が流れている…。
噛んだのは自分だけど、起きている事態が怖かったのだと思う。
「そう遠くへは行かないはずだから、一旦家に帰って、家に戻す工夫をしたほうがいいわよ。
外で捕まえるのは無理よ。
家に帰って、出入り口を開けて待ってみたら」
フェンス越しのMさんの説得に、私は腰をあげた。
日曜日の午前中の静かな住宅地の路地での流血の惨事を、誰も見ていなかったことが幸い。
自宅に戻り、メモを書いた。
ネットで見ていた、するるさんの迷子の白い猫しらすちゃんの迷子記事が、鮮明に脳裏の中にあった。
いつかは、彼女に頼る日がくるかもしれないと思った。
残念ながらパソコンも荷造りしてしまったので、メモ帳に手書きで簡単なことだけ書いた。
名前 しろちゃん
性別 ♂
年齢 2歳
白猫、尻尾は15センチ程度、首輪はグリーン。
自分の氏名連絡先を入れて、5枚程度書いた。
手が震えていたので、オバケが書いたようなメモ書きとなった。
「うらめしや~~」
オバケのようなしろちゃんだった。
脱走1ヶ月半前のしろちゃん。
Mさんのお宅に再度出向いた。
しろちゃんの入り込んだはす向かいのお宅にまず先にメモを渡すよう、促された。
Mさんにはお付き合いは無いそうだが、たまたま偶然、そのお宅のご主人が出てきて、庭のフェンス越しに簡単な事情の説明とメモを渡すことができた。
「その傷、早く洗って消毒したほうがいいわよ。
猫に噛まれることを侮ってはダメ。
それからね、気持ちはわかるけど、今日はあなたが家に居なくちゃ。
引越しで、それじゃなくてもいつもと違う様子の家にあなたが居ないと、しろちゃん怖くて帰って来れないよ。
しろちゃんが最初に家に入って来た出入り口を開けておいて、そこにあなたが居て待つことね。」
「毎晩、一緒に寝ていたんですよ~抱いて寝ていたんですよ~私には、かけがえの無い存在なんです。」
今言ってもしかたないことを、Mさんに向かって言いつつ涙がポロポロとこぼれた。
「日が暮れたら、帰ってくるかもしれない。
うちのノンちゃんが、連れて帰ってくるかもしれない。
ノンのほうが兄さんだから、しろちゃんを家に帰るよう説得してるかもよ。
猫ってさ、猫同士で話すのよ、猫同士、友達を大事にするからね。
もしうちに連れてきたら、中で保護しておくね。
大丈夫、帰ってくる、こんなにあなたが想ってるんだもの、しろちゃんもわかってるって。
野良猫さんに戻ろうなんて思ってないって!
ただ、家が騒がしいので、怖くて戻れないだけよ。」
「だってだってさ、ノンちゃんにさよならを、僕は言ってないんだよ。
ママ達があらかじめ、引っ越すよって、僕に詳しく親切丁寧に教えてくれればよかったんだ
そのときの僕には、ノンちゃんはかけがえのない友達で、たった一人の友達だったんだ!」
脱走1ヶ月半前のしろちゃん。
猫のベテランのMさんの優しい慰めの言葉に、涙がグングンと溢れてくる。
今まで、ご近所さんとしての連絡事項程度しかお付き合いの無かったMさんが、こんなにステキな人だったなんて!
猫ちゃんのつむぐ絆に、私はかなり救われた。
引越しの進展具合は何もわからないが、ハチャメチャ&半分がらんどうになった家の中に戻った。
傷を水で洗って、タオルを巻いたが、血がなかなか止まらない。
お腹も空かない、喉も渇かない。
エアコンも無い真夏の家の中なのに、暑さも感じない。
記事に時間の記載がないが、この日の時間の流れがまるでわからないのだ。
しろちゃんがいないということは、私にとっては、自分の存在のコンパスをなくすようなことだった。
しろちゃんが、いつしか自分が生きている証になっていたのだ。
「僕がママの生きているアカシ?
それは僕も責任重大ですね。
軽率な行動は今後つつしみますm(__)m
どんな人もどんな猫さんも、みんな誰かの生きているアカシなんですね。
一人では生きられないし、誰かの生きているアカシにならなければ、
生きている価値も無いってことなんですね。」
昨日現在のしろちゃんは、少しはお利口さんになったかな。
またまた続くになってしまいました。
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